年金相談
今後の少子・高齢化時代において年金は、老後の生活にとって大変大きな比重を占めてきます。年金を受給できるか否かで、老後の生活設計が大きく左右されるといっても過言ではないでしょう。
しかしながら、現在の年金制度は、将来の長寿社会に対応して何度も改正が行われ、新旧の制度が並立して、一般の人には分かりにくくなっています。そのため、制度が変更されたのに気がつかず、所定の手続を怠ったり、また、被保険者であった期間が短かったため、自分で年金は受給できないと思い込み、その後所定の手続をしないで、年金の受給権を喪失してしまうなどのケースが多くあります。さらに、年金額の基礎となる保険料の算定方法を誤り、年金を受給するとき、自分の予測した額より少ないケースもよくあります。
当事務所では、年金の加入期間、受給資格等についてわかりやすく説明するとともに、年金の裁定請求に関する書類を依頼人の皆様に代わって作成、提出いたします。
年金制度のしくみ
日本の年金制度は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社などに勤務している人が加入する「厚生年金」の2階建てになっています。
国民年金の被保険者
国民年金の被保険者の種別は職業などによって3種類に分かれており、それぞれ加入手続きや保険料の納付方法が違います。
加入する人 | 加入手続 | 保険料の納付 | |
第1号 被保険者 |
・学生・自営業者 等 | 住民票のある市区町村の国民年金担当窓口 | 納付書又は口座振替で納付 |
第2号 被保険者 |
・会社員・公務員 等 | 勤めている会社や役所など | 勤務先で納付 |
第3号 被保険者 |
第2号被保険者の被扶養配偶者 | 配偶者が勤めている会社や役所など | なし(配偶者が加入する制度が負担 |
●国民年金は基礎年金を支給
国民年金は、自営業者だけでなく、厚生年金などの被用者年金制度の加入者とその配偶者にも共通する給付として、①老齢基礎年金、②障害基礎年金、③遺族基礎年金の3種類の基礎年金を支給します。
●厚生年金は基礎年金に上乗せ
厚生年金が適用されている事業所に勤めるサラリーマン等は、国民年金と厚生年金の2つの年金制度に加入することになります。
厚生年金から支給される年金は、加入期間とその間の収入の平均に応じて計算される報酬比例の年金となっていて、次のように基礎年金に上乗せするかたちで支給されます。
●基礎年金番号
基礎年金番号は、共済組合を含めて、加入する年金制度が変わっても、1人の人が一生をとおして使用する番号です。平成8年12月に公的年金制度に加入していた方には「基礎年金番号通知書」が送付されていますので、この通知書を年金手帳と一緒に保管してください。
年金の給付
老齢年金
●老齢基礎年金
20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた方は、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。保険料を全額免除された期間の年金額は1/2(平成21年3月分までは1/3)となりますが、保険料の未納期間は年金額の計算の対象期間になりません。
※老齢基礎年金を受けるためには、保険料を納めた期間、保険料を免除された期間と合算対象期間(注)とを通算した期間が原則25年間(300月)以上あることが必要です。
(注) 年金額に反映されないため「カラ期間」と呼ばれています。
合算対象期間には、
- 昭和61年(1986)3月以前に、国民年金に任意加入できる人が任意加入しなかった期間、
- 平成3年(1991)3月以前に、学生であるため国民年金に任意加入しなかった期間、
- 昭和36年(1961)4月以降海外に住んでいた期間、などがあります。
●老齢厚生年金
厚生年金の被保険者期間があって、老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間を満たした方が65歳になったときに、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金が支給されます。ただし、当分の間は、60歳以上で、
- 老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間を満たしていること、
- 厚生年金の被保険者期間が1年以上あることにより受給資格を満たしている方には、65歳になるまで、特別支給の老齢厚生年金が支給されます。
(注) 特別支給の老齢厚生年金の額は、報酬比例部分と定額部分を合わせた額となりますが、昭和16年(女性は昭和21年)4月2日以降生まれの方からは、定額部分の支給開始年齢が引き上げられます。昭和24年(女性は昭和29年)4月2日生まれの方からは、報酬比例部分のみの額となります。
障害基礎年金
●障害基礎年金
国民年金に加入している間に初診日(障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師の診療を受けた日)のある病気やケガで、法令により定められた障害等級表(1級・2級)による障害の状態にある間は障害基礎年金が支給されます。
(注) 障害基礎年金を受けるためには、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付又は免除されていること、または初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(保険料納付要件)が必要です。
厚生年金に加入している間に初診日のある病気やケガで障害基礎年金の1級または2級に該当する障害の状態になったときは、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。
また、障害の状態が2級に該当しない軽い程度の障害のときは3級の障害厚生年金が支給されます。
なお、初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときには障害手当金(一時金)が支給されます。
(注) 障害厚生年金・障害手当金を受けるためには、障害基礎年金の保険料納付要件を満たしていることが必要です。
遺族年金
●遺族基礎年金
国民年金に加入中の方が亡くなった時、その方によって生計を維持されていた「18歳到達年度の末日までにある子(障害者は20歳未満)のいる妻」又は「子」に遺族基礎年金が支給されます。
- 遺族基礎年金を受けるためには、亡くなった日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付又は免除されていること、または亡くなった日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないことが必要です。
- 加入者であった方が亡くなった場合でも、老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間を満たしている場合は、支給されます。
●遺族厚生年金
厚生年金に加入中の方が亡くなった時(加入中の傷病がもとで初診日から5年以内に亡くなった時)、その方によって生計を維持されていた遺族(①配偶者または子、②父
母、③孫、④祖父母の中で優先順位の高い方)に遺族厚生年金が支給されます。
30歳未満の子のない妻は5年間の有期給付となります。また、夫、父母、祖父母が受ける場合は55歳以上であることが条件ですが、支給開始は60歳からとなります。
- 子のある妻又は子には、遺族基礎年金も併せて支給されます。なお、子は遺族基礎年金の受給の対象となる子に限ります。
- 遺族厚生年金を受けるためには、遺族基礎年金の保険料納付要件を満たしていることが必要です。
- 加入者であった方が亡くなった場合、老齢厚生年金を受けるのに必要な資格期間を満たしている場合は、支給されます。
- 1級・2級の障害厚生年金受けられる方が死亡した場合でも、支給されます。
在職老齢年金
在職老齢年金は、老齢年金を受け取れる方が勤務を継続し、給与を受け取っている場合、年金の一部から全部が支給停止となる制度です。 支給停止となった年金は、後日に支給されることはありません。
在職老齢年金の対象となる収入は、厚生年金に加入している勤務先での給与と賞与の額です。
老齢厚生年金に加給年金額が加算されている場合は、基本となる老齢厚生年金が1円でも支給される場合には加給年金額は全額支給されますが、基本となる老齢厚生年金が全く支給されない場合は全額支給されません。
厚生年金基金の加入期間がある場合は、基金への加入がなかったものとして在職老齢年金の停止額を計算し、まず国から支給する額を支給停止し、それを超えた場合は国の代わりに基金から支給される部分を支給停止します。
基金からの年金が支給停止になるかどうかは、基金によって異なりますので、それぞれの基金へご確認下さい。
【60歳台前半(60歳~64歳)の在職老齢年金の計算】
- 総報酬月額相当額(標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与額の総額を12で除して得た額とを合算した額)と基本月額(年金額を12で除して得た額)との合計額が28万円(支給停止調整開始額)以下の場合
支給停止額=0(全額支給) - 総報酬月額相当額と基本月額の合計が28万円を超える場合
この場合は、基本月額が28万円以下か、28万円を超えるか、また、総報酬月額相当額が47万円を超えるかによって、次の①から④の場合に応じて支給停止額が計算されます。
①基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円以下の場合
支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)×1/2×12
②基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円を超えるとき
支給停止額={(47万円+基本月額-28万円)×1/2
+(総報酬月額相当額-47万円)}×12
③基本月額が28万円を超え、総報酬月額相当額が47万円以下の場合
支給停止額=(総報酬月額相当額×1/2)×12
④基本月額が28万円を超え、総報酬月額相当額が47万円を超えるとき
支給停止額={47万円×1/2+(総報酬月額相当額-47万円)}×12
【60歳台後半(65歳~)の在職老齢年金の計算】
60歳台後半の在職老齢年金の仕組みは、老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額を12で除して得た額(基本月額)と総報酬月額相当額に応じて、次のようになっています。
- 基本月額と総報酬月額相当額との合算額が47万円(支給停止調整額)以下の場合
支給停止額=0(全額支給) - 基本月額と総報酬月額相当額との合算額が47万円(支給停止調整額)を超える場合
支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)×1/2×12
(注1) 支給停止調整開始額は、新規裁定者の再評価率の改定の基準となる率と同じ率で改定されることになります。
(注2) 支給停止調整変更額は、現役男子被保険者の賞与込みの平均賃金を基準として設定されているために、名目賃金変動率で改定されることになります。
※ 名目賃金変動率:前年の物価変動率に3年前の実質賃金変動率(3年平均値)を乗じて得た率のことをいいます。